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ロシア革命の光と影

 今年はロシア革命から100年。その壮大な社会実験の歴史を多くのメディアが振り返っているが、政治だけでなく文化の側面を見ておくことも大事なことだ▼ロシアやスラブの文学が専門の亀山郁夫、沼野充義両氏の対談「ロシア革命100年の謎」(河出書房新社)を読むと、革命前史も含めた政治と文学の深い絡み合いが紹介されていて、学ぶことが多い▼その中で、ロシア・アバンギャルドと呼ばれる前衛芸術運動に触れている。文学や美術、演劇、映画など幅広い分野で革命と相前後して花開き、スターリンの圧政下で息絶えた運動である▼学生時代にその歩みを調べたことがあり、もしこの運動が続いていたらソ連はもっと違う姿になっていたのではないかとよく思ったものだ。芸術の革命が政治の革命と歩調を合わせて進み、やがて自由を喪失していく過程は革命後のソ連社会の運命そのものだった▼だが沼野氏によると、意外にもスターリン時代は粛清が吹き荒れる暗黒の世に見えて、最終的な享受のレベル、つまり一般国民から見れば幸せな時代でもあったという。1930年代には一定の安定を取り戻し、ミュージカル映画なども楽しめるようになっていたと▼歴史の光と影から何を学ぶか。一面的な見方ではない複眼の研究を深めてほしい。

[京都新聞 2017年11月22日掲載]

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