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敗者たちの季節

 73校がすでに涙をのんだ。きょう4強が激突する全国高校野球京都大会である▼先日、母校の初戦を見た。終盤まで1点を争う好ゲームだったが、エースの3年生が足を痛めて降板、そのまま敗れた。試合後、仲間に背負われる彼の姿に無念さが漂った。<肩を落し去りゆく選手を見守りぬわが精神の遠景として>島田修二▼作家あさのあつこさんの小説に、高校野球に取材した「敗者たちの季節」がある。地区予選の決勝で敗れ、甲子園出場の夢を絶たれた高校の野球部を軸に、さまざまな敗者を描く▼あさのさんは物語を書きながら、自分にとっての「敗北」を掘り起こした。挫折やごまかし、逃げ…。数々の苦い経験が作品を引き立てる▼性格なのか、年齢のせいか。最近は勝者より敗者が気になる。陸上の日本選手権100メートルで4位に沈んだ桐生祥秀選手。公式戦連勝記録が29でストップした将棋の藤井聡太四段。テニスの錦織圭選手もウィンブルドンで苦杯をなめた▼「将棋は自分で負けを認めねばならないゲーム」。こう話すのは谷川浩司九段だ。投了の際はどんなに悔しくても頭を下げる。「負けました、とはっきり言える人は強くなる」と。谷川さん自身800回以上も口にした。敗北の意味は人によって違う。これを見つめる心を大切にしたい。

[京都新聞 2017年07月24日掲載]

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