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(11)特別な場所

守り伝える心は世界共通
1880年に建設され、第2次世界対戦で破壊された旧オペラ座。2005年に現在の形に修復され、市民のよりどころとなっている(筆者撮影)

 以前、ザイフェン村の木工工芸品を紹介したが、ドイツは地方分権のため各地に名産がある。京都は京都だけで多くの美術工芸品を見ることができる。しかも交通が便利で名所旧跡もあり、風光明媚(めいび)。このような都市は世界的にまれだ。

 それを可能にしたのは、長らく王朝が栄えたことだろう。1200年以上続く歴史都市だからだ。衣食住のすべてに日本を代表する技術と感性が生き、見る人にさすが京都と言わしめる。

 フランクフルトが市制1200年を迎えた17年前、京都も平安建都1200年の節目だった。このため双方の記念事業として、当時としては珍しい同時生中継が行われた。フランクフルトからは、オペラ座で着物を着た民間のドイツ人が大勢出演したそうである。偶然にもその時の参加者に出会い、いまだに提供された着物を持っていると聞いた。

 姉妹都市ではないが、似たような歴史背景を持ち合わせている。神聖ローマ帝国の時代、皇帝選挙や皇帝の戴冠式(たいかんしき)はフランクフルトで開かれていた。日本では天皇が京都で即位式を行い、ヨーロッパでは皇帝の戴冠式をフランクフルトで行っていた。そんな背景が双方にある。

 先ごろ、海外企業が京都にホテルを建設するという報道を耳にしたが、関係者から聞くと京都は特別な場所だという。外国人が理想とする日本が京都に凝縮しているということもあるが、京都は彼らの心を満たしてくれるともいえるのだ。

 仕事柄、外国人と接する毎日だが、歴史から文化芸術、経済、科学に至るまで、京都に対する質問は尽きない。そして彼らは必ず最後に憧れのため息をつく。

 京都とフランクフルトを行き来して感じることがある。いろんな意味で、日本人が提案する内容と外国人たちの希望とにずれがあることだ。今は中国に代表されるように、富裕層をターゲットにした企画や宣伝が目につく。しかし、世界は富裕層ばかりではなく、中間層の方が多い。訪れる人々がそれぞれに楽しめる企画があればと思う。

 フランクフルトは第2次世界大戦で、ほとんどの建造物が無残な姿になった。しかし1980年代後半から修復作業が行われ、戴冠式で使われた聖バルトロメウス大聖堂、旧オペラ座など数多くが当時の姿を見事によみがえらせた。今日、観光地として欠かせない場所になっている。古いものを守り伝える心は世界共通なのだ。(京都センター主宰)=おわり

【2011年5月16日掲載】