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歌手 横山剣さん

横文字似合う都市、イーネッ!

 京都を色に例えると「グレージュ。ベージュにグレーを混ぜた、上品でかっこいい感じ」という。おしゃれな横山さんらしい。
 この連載「京都・滋賀いろいろかたり」では約2年余りの間に、各界で活躍する50人に話を聞いてきたが、京都の色をグレージュと表現した方は初めてだった。最も多かったのは紫で10人。赤(朱)が8人で続くが、面白いのは白が6人で3番目に多く、茶の5人より多かったことだ。ある特定の色に偏ることを拒むかのような京都の多面体が、かすみの中でおぼろげに姿を見せているようだ

授業形式で音楽を語る催しで京都を訪れた。「保津峡下りで嵐山に着いた時の安堵感と、茶店に入ってようかんを食べた思い出も忘れられない。京都、イーネッ!」(京都市中京区・元立誠小)
授業形式で音楽を語る催しで京都を訪れた。「保津峡下りで嵐山に着いた時の安堵感と、茶店に入ってようかんを食べた思い出も忘れられない。京都、イーネッ!」(京都市中京区・元立誠小)

 クレージーケンバンドのボーカル横山剣さん(55)は今も住む横浜市の印象が強いが、実は京都と縁が深い。
 「横浜市立大正中学の3年の時、修学旅行で来ました。新京極の旅館で、同じ部屋の同級生たちと、当時人気だったバンド『キャロル』のボーカル矢沢永吉さんとギターのジョニー大倉さん(2014年死去)の話題になって、どちらが好きかで大げんかになって。部屋で大乱闘。今はどちらも大好きですが、当時の僕は断然矢沢さん派で。でも、8対2ぐらいの割合で圧倒的にジョニー大倉派が多くて、まあ大変でした。うるさかったんでしょうね。下の階でお酒を飲んでいた先生たちが上がってきて。翌日バリカンでまるぼうずにされました。旅館のすき焼きがあまりにうまくて、ご飯を21杯食べました。木刀のお土産を買った覚えがあります」

 父と巡った幼いころの思い出もある。
 「最初に京都を訪れたのは大阪万博のころで。小学4年の時に、両親の離婚で兵庫県の武庫之荘に預けられていたことがあって。父は京都の美術関係の専門学校出身で京都に思い入れが強く、お寺とか一緒に見て回った記憶があります。そして、いつも暮れになると錦市場におせちの具材を買いに連れて行ってくれました。親戚の車で二条城や清滝などを案内してくれた思い出もあります」

横浜と深い音楽的つながり

「懐かしい感じがする校舎の中で歌ったり話したりでき、素晴らしい時間を過ごせました。こんな空間が残され、現役なのがさすが京都」(中京区・元立誠小)
「懐かしい感じがする校舎の中で歌ったり話したりでき、素晴らしい時間を過ごせました。こんな空間が残され、現役なのがさすが京都」(中京区・元立誠小)

 京都と横浜。古都と港町の両都市は対照的にも見えるが、音楽的なつながりが深いと語る。
 「横浜と音楽事情が密接です。横浜を代表するバンド『ザ・ゴールデン・カップス』はGSブームが終わって京都にメンバーが移り住んで演奏していました。一方で、横浜の街を面白くしたのは意外にも京都の人が多い。横浜って、東京と比べると、ちょっと大人な感じがあるでしょ。京都市には港がないから、京都の方が憧れてくれるのかもしれない。僕も、京都のミュージシャンとの交流が楽しくて、磁場みたいなものを感じています。

 京都って歴史的な街だけど、なぜか横文字が似合うんですよね。外国人観光客向けの標識が多いし、昔から外国のロックスターやミュージシャンも写真撮影は必ずと言っていいぐらい京都で撮影する。和の都市なんですが、インターナショナル感がある。横浜は米軍基地があって港があってエキゾチックですが、京都は独特のモダンさが漂っています」

 京都にちなんだ歌も作っている。2012年発表のアルバムには「京都野郎」という曲が収められている。
 「『京都野郎』は、京都のバンド『バンビーノ』の曲『すっとびヒロシ五十三次』に刺激されて作った歌『まっぴらロック』の第2弾として作りました。昔、京都のレーサーで非常にかっこいい方がいらっしゃって、祇園やディスコ『マハラジャ』など、いろんなところに連れていってもらったんです。そのセンスのいい感じや、今も交流があるバンヒロシさんの粋な感じとか、いろんな要素をミックスした架空の人物が1969年の大みそかにドライブして、そのまま年が明けて大阪万博の70年を迎えるという設定。映画『007は二度死ぬ』のジェームズ・ボンド役、ショーン・コネリーが京都にたたずんでいるイメージも重ねました」

 京都は私的にもたびたび訪れている。なのに、どこか近寄りがたさも感じる。
 「センスが磨かれる街。だから、いつも、ちょっと緊張します。口ではプレーボーイとか何とか言ってますけど、舞妓さんとどう過ごすとか全くイロハを知らないんで。そういう京都の奥深いところは未知の世界で、憧れます。いつか経験してみたいと思いながらもう55歳ですから。30歳ぐらいから踏み出せば良かったと、後悔しています」

よこやま・けん

「今年のお正月には大学進学を控えた娘とキャンパス見学を兼ねて京都を巡りました。父親との思い出が染み込んだ京都を娘と歩く。不思議な感じでした」
「今年のお正月には大学進学を控えた娘とキャンパス見学を兼ねて京都を巡りました。父親との思い出が染み込んだ京都を娘と歩く。不思議な感じでした」

 1960年神奈川県生まれ。1997年にクレイジーケンバンドを結成。2002年発表の「タイガー&ドラゴン」がヒット。「イーネッ!」の決めぜりふでも知られる。横山さんのデビュー35周年を記念したアルバム「香港的士-Hong Kong Taxi」を8月にリリースし、全国ツアーを始める。

【2016年07月02日掲載】