京都新聞TOP > 文化・文芸・教育アーカイブ >坪倉由美の日々しましま
インデックス

坪倉由美の日々しましま

(19)愛のおむつ
 親友のA子はマレーシアで暮らしています。観光で行ったマレーシアで現地の男性と巡り合い、結婚しました。四十代後半で二人の子どもを出産し、日本語講師をしています。
 二カ月に一度ぐらいの間隔で彼女と国際電話で長電話をするのが楽しみ。彼女の生活水準はマレーシアではごく普通ですが、日本とは貨幣価値が違い、電話料金を思うとA子からはなかなかかけられず、私からのラブコール(?)を向こうでひたすら待ってくれています。
 先日久々に電話をすると、少し沈んだA子の声。「ぎっくり腰してしもてなぁ。寝たきりやねん。」。その日の朝、ご主人の出勤後、シャワーを浴びていて体をそり返した拍子にギクッといったとか。母のわめき声で駆けつけた四歳と二歳の娘がタオルで体をふき、パンツをはかせてくれたそうで、痛みにうめきながらもわが子の成長に「泣いてしもた」とA子。
 仕事も長くは休めないし、幼子もいる彼女は二日間で完全復帰を誓いました。ぎっくり腰の早期治癒は絶対安静、動かないこと。夫にも二日間休暇を取ってもらい、A子は養生に徹しました。
 電話したのはその一日目の夜。話をしていると電話の向こうでベリッとテープのはがれるような音とA子の笑い声。「どうしたン?」と聞くと「今ダンナが私の紙おむつ替えてくれてるねん」。
 えっ! トイレにも行ってへんの? そこまで安静に! 驚きました。本気の治療にはそれぐらいの決意は必要でしょう。それにしても思いきったことを! しばらくするとまたA子が笑います。「私のが終わって、今度はムスメのおむつ替えてはるわ」。妻のためとはいえ、ほんまにお疲れさまです。(イラストレーター)=おわり
【2008年3月27日掲載】