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(1)消費電力の可視化

使用状況を一括で管理 節電自動化の第一歩に
「賢い省エネ」の実現に向け、消費電力を可視化する実験が進むマンション。掃除機のスイッチを入れると、テレビ画面に掃除機の絵と、現在の消費電力が表示された(京都市下京区)

 つけっぱなしの照明をコンピューターが見つけ、自動でスイッチを切る。そんなエコ生活が近い将来、実現するかもしれない。京都市内のマンションで進む実証実験は、情報通信技術を活用して電力を賢く使う「スマートグリッド」(次世代送電網)導入の第一歩として注目を集めている。

 「試しに掃除機を使います」。マンションに住み込んで実験を続ける研究員がコンセントにコードをつなぎ電源を入れると、テレビの大画面に掃除機の絵と消費電力が表示された。掃除機がどの部屋のどのコンセントで使われているかも一目で分かる。

 からくりはコンセントにある。マンションの室内には「スマートタップ」と呼ばれる消費電力測定器が、すべてのコンセントに取り付けられている。測定器が読み取ったデータは、無線通信でパソコンに送られて画面に表示される仕組みだ。機器特有の電力波形を読むことで、どんな家電が使われているかを判別できる。

 実験は京都大情報学研究科の松山隆司教授が主導し、ロームやニチコンなど64社が参加する研究組織「エネルギーの情報化ワーキンググループ」が昨夏から始めた。目的は「生活の質を落とさない賢い省エネ」の実現だ。

 実験では、画面に消費電力を表示した日は表示しない日に比べ23%も省エネできた。「消費電力を可視化するだけでこれほど削減できる。無駄な電気を自動で消せれば、削減量はより大きくなる」(松山教授)。電気の使用状況でどの部屋に人がいるかを推定するシステムもほぼ完成、まもなく実証に入る。

 スマートグリッドの大規模な実証実験が始まった関西文化学術研究都市。京田辺市同志社山手の住宅地では、51世帯に電力測定ユニットを取り付け、消費電力を可視化して街ぐるみで省エネを進める実験が進んでいる。

 「電源を入れた後に必ず画面で確認するようになった。電気の量が見えることで意識が変わった」。実験に参加する主婦大和美鈴さん(55)は話す。

 「生活者自身がエネルギー管理の当事者になる。これこそがスマートグリッドの第一歩」。松山教授は意義を強調する。

 福島第1原発の事故で、日本をはじめ世界各国のエネルギー政策は根底から見直しが迫られている。地球温暖化を防ぐ上でも期待を集めているのは、太陽光や風力発電、バイオマスなど再生可能エネルギーだ。その導入拡大に欠かせないスマートグリッドの研究開発に、世界が走りだしている。研究者や企業の動きを追った。=5回掲載します

スマートグリッド

 情報通信技術を使い、需給を調整しながら電力を効率的に使う送電網。太陽光発電や風力発電など、出力が天候に左右されて安定しない自然エネルギーの大量導入に向けても、各国が研究を急いでいる。電力供給を安定させたり需要量に応じて出力調整する制御技術や、自然エネルギーを蓄える技術などが不可欠となる。

【2011年4月19日掲載】