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フラワーハウスおむろ社長 島本壮樹さん

京の伝統工芸品とコラボした盆栽に挑戦
島本壮樹さん
しまもと・そうき 立命館大法学部卒。2008年、P&Gジャパン入社。営業やマーケティングを経て11年に独立後、実家の生花店「京都花室おむろ」を運営するフラワーハウスおむろ(京都市右京区)社長に就任。趣味は妻との旅行。右京区出身、中京区在住。

 新鮮な花き、産地直送

 花の命は短い。

 それならば-と、市場を介さず、消費者に産地直送する新しいビジネスモデルで花き業界に新風を吹き込む。「新鮮な花本来の美しさを届けたい」と話す。

 5年前に家業の生花店を継ぎ、まず取り組んだのは流通の見直しだった。国内で販売されるコチョウランなどの祝い花の大半は、生産者↓市場↓(仲卸)を経て生花店の店頭に並ぶため、流通過程の環境変化で鮮度が落ちるという。そこで仕入れ先の生産者を口説き、ネット販売による産直に切り替えることで、出荷から消費者の手元に届くまでの期間を大幅に短縮した。

 国内市場が縮み、価格競争の悪循環に陥る中、海外での「BONSAI」人気を追い風に、京の四季を表現したミニ盆栽の販路拡大を狙う。今月にはジェトロ京都貿易情報センターの支援を受け、春のミニ盆栽「おむろ盆桜」をシンガポールに初めて輸出した。「日本の良さは世界に通じる。お世話になった京都に恩返しがしたい」と誓う。

 たった一人で変革に挑む原動力は兄と父の死だ。

 弁護士を目指していた大学生の時、兄が旅先で急逝。進路変更し、兄が内定を得ていた日用品の外資大手に就職した。志望理由は、兄の代わりに遺族を入社式に招いた会社の心意気に感銘を受けたからだった。

 だが、ようやく社会人生活に慣れ始めた直後、今度は父が他界。がんだった。「こんなにあっけなく死ぬものなのか…」。やりきれない思いの中、東日本大震災が起きた。

 震災から1カ月後、ボランティアで被災地を訪れた。がれきの山と鼻を突く異臭…。東北の空に舞う花吹雪に人生の刹那(せつな)が重なった。「自分が死ぬ時、振り返れる生きた証しを残したい。一度きりの人生を後悔なく生きよう」。退職を決め、家業を継いだ。

 「次は京都の伝統工芸品とコラボレーションした盆栽に挑戦したい」。もう一花も二花も咲かせる覚悟だ。父と兄のためにも。=おわり

【2016年03月27日掲載】