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フューチャーベンチャーキャピタル社長 松本直人氏

脱IPOで投資回収
松本直人氏
まつもと・なおと 神戸大経済学部卒。2002年、フューチャーベンチャーキャピタル入社。ファンド設立やベンチャー育成支援に携わり、11年に取締役就任。16年1月から現職。堺市出身。36歳。

 大規模な金融緩和による「カネ余り」を背景に、大小のファンドがベンチャー企業への投資を活発化させている。投資を回収する方法は出資先の新規株式公開(IPO)が主流だが、株式市況次第で計画が大きく狂うリスクもはらむ。「脱IPO」に舵(かじ)を切ったフューチャーベンチャーキャピタルの松本直人社長に戦略を聞いた。

 -IPOを出口としない理由は。
 「未上場企業に投資し、IPOで回収するのが日本のベンチャーキャピタル(VC)の標準だったが、リーマン・ショックで壊滅的なダメージを受け、自分なりに検証した。国内のIPOは、東証1部を除く新興市場で年平均70社で、VC全体の回収額は多く見積もっても年500億円程度。これに対し、VCが昨年実行した投資総額は1300億円に上る。IPOに依存するビジネスモデルは成り立たない」

 -どんな方法で投資を回収するのか。
 「取得請求権付の種類株式を発行するモデルを開発した。投資先企業に株式を買い戻してもらうことでリターンを得る仕組みだ。黒字でないと自社株買いはできないため、投資先の利益が出れば回収ができる。議決権を取らないのもポイントで、創業期の企業にとっては、経営権を譲らずにリスクマネーが調達できる利点がある」

 -投資の基準は。
 「株式上場を基準に審査すると投資できない企業が大半で、歯がゆい思いをしてきた。新しいモデルは技術などで企業を評価するのではなく、感動や共感を生むビジネスかどうかで目利きする。社会に役立つ事業であれば、経営者が諦めず、優秀な人も集まりやすい。何より物語があるため、商品やサービスの粗利率が高い。企業に対する見方を変えれば、有望な投資先は数多くある」

 -実績はどうか。
 「東日本大震災を機にモデルを開発し、2015年に投資を本格化した。投資先は計100社に達したが、経営破綻はゼロ。第1号となる盛岡市の起業ファンドでは、8社に投資し、既に5社から回収した。うち2社が元本の2倍で、残り3社も元本以上だ。新しい投資モデルに強い手応えを感じている」

 「単独での支援には限界があるため、地域金融機関と組む。既に全国の地方銀行や信用金庫など11の金融機関とファンドを立ち上げた。20年度に100まで増やしたい。将来は投資先の広報や人材供給、販路拡大の支援も手掛け、ベンチャー企業向け総合商社のようなビジネスを展開したい」

【2017年09月19日掲載】