京都新聞TOP > 経済特集アーカイブ > Myウェイ Myライフ
インデックス

地域活動にアクセル

鈴木モータース社長  鈴木千鶴さん
鈴木モータース社長  鈴木千鶴さん
鈴木モータース社長  鈴木千鶴さん

 旧山陰街道沿いの宿場町だった京都市西京区の樫原(かたぎはら)地域で、昭和初期の町家を改装した自動車販売・整備会社を営む。2階は自宅。客は会社スペースの1階に出入りする。「エンジンオイル入れといてや」「ま、ここ座って。コーヒーでもどうぞ」。住民同士が世間話をしているようなやりとりが、店の日常だ。

 会社はかつて「桶屋長兵衛」の屋号で江戸時代から地元に根ざした桶店だった。戦後、祖父が自転車販売に業種を変え、68年前に父の代で現在の会社になった。家業を継いだのは2008年。代々、樫原で商いをしてきた家の当主として「地域の中で生きる」ことを経営理念とした。

 理念を実現するため、13年に市民団体「樫原町家灯篭会」を立ち上げ、年2回、旧宿場町に灯籠を並べるイベントを始めた。15年には「動く京町家プロジェクト」と銘打ち、荷台に京町家風の小屋を乗せた軽トラックを製作。雑貨販売など起業を目指す人たちに貸す事業を始めた。昨秋には、街道沿いに連なる町家の軒先でフリーマーケットも開き、ゆるキャラも自作した。

 活動はほぼ手弁当。原点には「歴史は資産」との考えがある。「お金を出しても歴史は買えない。値打ちある古いものを大切に残したい」。京町家保存のため、オイル交換で上がった収益の一部を「京町家まちづくりファンド」に寄付することも決めた。

 業界は車離れや格安車検の台頭で厳しさが増すが、「地域活動を評価し、新規に顧客となってくれる人も出始めたんです」。まちづくりへの本気の姿勢が、本業に良い流れを呼び込み始めている。

 自らを「道無きところに道をつくる4WD」と例えるが、まちづくりは1社でできない。かつて樫原宿は丹波、山陰地方から京都・大阪へ向かう商人や旅人が行き交い、にぎわった。「私の役割は、まちを元気にするため中小企業同士をつなぐこと」。まちづくりに、企業を巻き込む「新たな道」を見定めている。

すずき・ちづる 園田学園女子大卒。大手自動車販売会社勤務後、フラワーコーディネーターとして独立。2003年から家業に入った。京都中小企業家同友会幹事。樫原宿の歴史ツアーの住民ガイドなども務める。京都市西京区出身、在住。53歳。

【2017年05月14日掲載】