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(17)今出川通LRT

社会実験10年、機運再び

 2007年、京都市内を横断する今出川通で、LRT(次世代路面電車)導入のための社会実験が行われた。それから10年、導入に向けた動きは停滞しているように見えるが、近年、再び実現の機運が高まっている。かつて市が出した資料をもとに想定ルートを歩いた。

北野天満宮西側の今出川通は街路樹が植えられ道幅が広い。LRTは複線で敷設を想定している(上京区)
北野天満宮西側の今出川通は街路樹が植えられ道幅が広い。LRTは複線で敷設を想定している(上京区)

 今出川通のLRTは京福電鉄北野白梅町駅(北区)と京阪出町柳駅(左京区)を結ぶ全長4・1キロの構想だ。市がホームページで公表している、構想中の路線図や需要予測などの資料を手に、北野白梅町駅を出発した。

 道幅は広く両側に街路樹も植えられている。新緑に5月の風が吹き、電車に乗って窓を開ければ、きっと心地よいに違いない。

京都市電北野線の歴史を伝える石碑。北野地域と電車の縁の深さを物語る(上京区)
京都市電北野線の歴史を伝える石碑。北野地域と電車の縁の深さを物語る(上京区)

 北野天満宮の石鳥居が見えてきた。近くに「京都市電北野線記念碑」も立つ。日本の電車草創期に開通した北野線のモニュメントだ。北野地域と鉄道の縁の深さを物語る。

 市の路線案によると白梅町から千本今出川までは複線で、千本通以東は単線だ。道幅が狭いためだろうか。歩道沿いの街路樹が、千本通を境に姿を消した。

 今出川浄福寺の停留所も単線で、南側にホームを想定している。この付近から今出川通を走るバスの本数が急増する。平日の日中の時刻表では、1時間に4系統20本弱のバスが発着する。どのバスも車内は混雑していたが、LRTが走れば、混み具合は軽減されるのだろうか。

 堀川通を過ぎると堀川今出川の停留所だ。現行のバス停は東行き、西行きともに交差点の東側にある。LRTの停留所も堀川東入ルに置かれるのだろう。

10年前に行われたLRT導入のための社会実験。烏丸今出川付近では長い渋滞が発生した(2007年1月24日、京都市上京区・今出川新町付近より東を望む)
10年前に行われたLRT導入のための社会実験。烏丸今出川付近では長い渋滞が発生した(2007年1月24日、京都市上京区・今出川新町付近より東を望む)

 21世紀に入るころから、環境負荷が少なく、高齢化社会に対応した乗り物としてLRTへの注目が高まった。熊本市電では低床式車両が導入され、富山市ではJRのローカル線が第三セクター「富山ライトレール」に生まれ変わり、LRTの増発や駅の増加で、利用者が増えた。

 京都市の場合、2004年の市長選後にLRT敷設への動きが活発化した。07年1月24日、地元商店主や住民の反対が根強い中、2車線を封鎖して社会実験が行われた。実験では烏丸今出川で最長700メートルの渋滞が発生。事後調査で沿道商業者の65%が「商業活動に影響があった」と答えた。

 社会実験から10年。LRTが通る上京区の高齢化率は24・3%(06年)から27・2%(16年)に上昇。観光客が全市で1千万人弱増加し、市民や観光客から公共交通への不満が上がっている。

かつての京都市電時代の電柱が並ぶ賀茂大橋。擬宝珠のような飾りがあるのが特徴だ
かつての京都市電時代の電柱が並ぶ賀茂大橋。擬宝珠のような飾りがあるのが特徴だ
 近年、市民側での運動が活発化し、市民団体「みやこの電車百人委員会」が15年10月に発足した。今年2月には京都府中小企業団体中央会がLRT導入を求める特別委員会を立ち上げた。百人委の渡邉隆夫代表は「今の京都市の交通体系は『歩くまち』でなく『バスのまち』。交通体系の在り方を考え直すと、LRTも視野に入るはず」と語る。

 烏丸通を越え、同志社大と京都御苑の森を過ぎると鴨川はすぐだ。賀茂大橋の上には擬宝珠(ぎぼし)のような飾りを載せた市電時代の電柱が現役で使用されている。古い電柱の下を再び電車が走る日はくるのだろうか。

今出川通LRT

今出川通LRT

 ルートは、1976年まで走っていた京都市電今出川線と一致する。構想は健在で、市歩くまち京都推進室によると、市基本計画に基づく実施計画には「LRTなどの新たな公共交通への取り組み」が挙げられており、「今出川通に限らず今後も議論を深めていく」という。

【2017年05月12日掲載】