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サミット閉幕  「1対6」の構図を憂う

 どうにか結束を演出したとはいえ、米国と他の6カ国の溝は覆うべくもない。
 イタリアで2日間に渡った先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)は、重要議題で足並みが乱れる異例の会合となった。最大の対立点である貿易問題では米国が譲歩し、首脳宣言に反保護主義を明記しつつ米国の主張も盛り込む形で折り合ったものの、実際の政策の歩み寄りが見通せたわけではない。むしろ、トランプ米大統領が初のサミットの場で「自国第一」を押し出して会議全体を振り回した印象が強く、憂うべき状況だ。
 日本やドイツの対米貿易黒字を問題視するトランプ氏は、会議の中で「(各国が米国に)30%の関税を課すなら米国も関税を30%にする」と、米市場から外国製品を締め出すとも取れる発言で対立を鮮明にした。離脱を公約している地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」については、各国首脳から残留を強く求められたものの、態度を明確にしなかった。
 その結果、首脳宣言は温暖化対策で米国を除く6カ国の連携を確認するにとどまった。宣言とは別に議長国イタリアが求めた難民問題に関する共同声明も、イスラム圏に厳しい移民・難民政策を取る米国の意向で見送られた。
 ロシア疑惑で大揺れの米政権としては、公約実現に向け強気の外交姿勢を示し、国内の支持層をつなぎとめる狙いもあるのだろう。
 テロ対策に加え、北朝鮮の核・ミサイル開発に危機感を強めるトランプ氏が日本側とともに欧州首脳に注意喚起し、対北圧力の強化へ合意を取り付けた点は評価できる。だが、これまで各国が共有してきた自由貿易主義や温暖化対策に亀裂を生じさせたことは、G7の弱体化を招きかねない。
 世界経済の議論の重心が新興国を加えたG20に移る中、地球規模の幅広い課題でリーダーシップを発揮してきたのがG7だ。その役割の重要性を、6カ国の首脳はトランプ氏に引き続き説く必要がある。
 トランプ政権を生んだものの一つは、自由貿易やグローバル化の恩恵を受けられない人々の怒りであり、欧州でも同様の声が広がっている。今回のサミットにはそうした中で就任した首脳たちが新顔として加わった。格差や貧困への早急な対策も、G7が共有すべき重要な課題だ。

[京都新聞 2017年05月29日掲載]

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