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学長に辞任勧告  府民の信頼を揺るがす

 京都府立医科大付属病院(京都市上京区)が指定暴力団組長の収監見送りを巡って虚偽の文書を作成したとされる事件で、府立医大の教育研究評議会が、暴力団組長との交際が指摘され道義的責任は重いとして、吉川敏一学長に辞任を勧告した。
 府民の負託を受け、高い倫理性が求められる高等教育機関の長が、反社会団体のトップと親密な関係にあったのなら、深刻な問題だ。道義的責任は免れず、辞任は当然といえる。
 しかし、吉川学長は「特別な関係はなく、辞任するつもりはない」とのコメントを発表し、勧告を拒否している。協議会は、勧告への回答期限を27日正午に設定し、辞任を拒否したり、回答がない場合、学長人事を議論する選考会議に解任を請求する方針だ。
 吉川学長は選考会議で審議が始まれば自らの見解を述べるとしており、記者会見を開く意向も示している。府民の信頼を失墜させかねない事態だ。学長は、本当に問題がないのか、詳細な事実を明らかにしなければならない。
 事件では、同病院が腎臓移植手術を実施した暴力団組長について「収監に耐えられない」とする虚偽の診断書を検察に提出した疑いが持たれている。
 捜査関係者によると、組長は知り合いの京都府警元警部補を通じて同病院で手術を受けたという。病院側には当初慎重な意見もあったが、病院幹部の判断で一転して受け入れを決めたとされる。
 こうした経緯が不透明なところに、学長と組長が親しい関係にあるとの疑念が浮上した。
 病院関係者によると、吉川学長は、この元警部補と京都市内で食事中、同じ店にいた組長を紹介されたと病院側の調査に対して説明したという。さらに、代理人弁護士を通じ「よく行く飲食店で偶然2回ほどあった。医師として体調のアドバイスなどの会話をした程度」と接触を認めたが、「(組長と)飲食するために出かけたことは一切ない」と主張している。
 こうしたことから、吉川学長は勧告に「辞任するに値するほどのものかという点には疑問がある」と反論し、「何ら不正なことは行っていない」と主張する。
 ただ、学長の職責の重さを考えれば、疑念を抱かれる行為を慎むべきことも忘れてはなるまい。
 府と府立医大を運営する府公立大学法人はそれぞれ、事件の検証のため、調査委員会を設置した。学長と組長の関係についても徹底的に検証してもらいたい。

[京都新聞 2017年02月27日掲載]

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