The Kyoto Shimbun
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COP17 日本読み違い、存在感ゼロ

滋賀本社 日比野敏陽
COP17の会場では環境NGOの「京都議定書を救え」というアピールが繰り返し行われた(昨年12月、南アフリカ・ダーバン)

 トランプでもマージャンでもいい。真剣勝負の真っ最中にカードや牌(ぱい)を投げだして、「この勝負に意味はない」などと言えば、もう誰も相手にしてくれないだろう。

 昨年12月、南アフリカ・ダーバンで開かれた国連気候変動枠組み条約第17回締約国会議(COP17)で「いかなる場合も京都議定書の第2約束期間には参加しない」と繰り返した日本政府の行動は、まさにこれだった。第2約束期間という「カード」を放棄することで交渉という「勝負」を事実上降りてしまった以上、日本の影響力、存在感の低下は避けられない。

 「よく言っていただきました」。閣僚会合2日目の午前、COP17の総会で演説を終えた細野豪志環境相に経産省OBの1人が駆け寄り握手を求めた。この人物は現在、日本経団連に連なるシンクタンクの幹部を務める。

 経団連は1997年の京都議定書採択以来、一貫して「先進国だけに温室効果ガスの削減義務を課す京都議定書は不平等条約」と主張してきた。それだけに第2約束期間への不参加表明は「悲願達成」というわけだろう。

 だが、不平等条約というのは間違いだ。議定書の上にある気候変動枠組み条約は温暖化問題に対する先進国と途上国の責任を「共通だが差異がある」と明記している。京都議定書はこれに基づき、法的拘束力のある各国の行動を定めた。すでに気候変動の被害に直面している途上国などにとって議定書の意味はきわめて大きい。「アフリカを京都議定書の墓場にするな」。COP17でこうした声が盛んにあがったのはそのためだ。

 COP17の焦点は2012年末に先進国の排出削減期間が終わる京都議定書の延長と、米国や中国など新興国も参加する新たな体制をいつ、どのように作るかだった。

 これに対し日本は「米や新興国が入らない第2約束期間はマイナス」と繰り返すだけ。一方、欧州連合(EU)は「米や新興国の新体制参加を条件に第2約束期間を受け入れる」という姿勢を取った。

 その結果、どうなったか。第2約束期間をカードにぎりぎりの交渉がEUと新興国を中心に繰り広げられ、「京都議定書の延長」と「米中を含む新体制を2020年から始める」という包括合意がまとまった。しかしこの間、日本は蚊帳の外におかれたままだった。交渉を長年ウオッチしているNGOメンバーは「日本は『いかなる場合でも』と言ってしまった以上、条件闘争すらできず存在感ゼロだった。交渉の完全な読み違いだ」と批判した。

 日本の存在感のなさは政府記者会見でも顕著だった。会見は各国やNGOにとって戦略的な情報発信の機会だが、日本の会見に集まった9割は国内メディア。「ほとんど日本人だが、どう思うか?」。こう問うと交渉代表は絶句し「記者はみんな忙しい…」と答えるだけだった。

 COP17後に政府がまとめた文書には「第2約束期間に参加しないというわが国の立場が文書に盛り込まれた」とある。筋読みを誤り、孤立感を深めたことへの反省も危機感も、今後の国際交渉を先導しようという気概も感じられない。その内向きな姿勢にがくぜんとしてしまう。

[京都新聞 2012年1月18日掲載]

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