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福知山の女児「虐待死」 予兆把握も共有できず

報道部 冨田芳夫
児童虐待防止を呼び掛けるポスター。被害を防ぐため、関係機関の情報共有の在り方が問われている(京都市上京区・府家庭支援課)
児童虐待防止を呼び掛けるポスター。被害を防ぐため、関係機関の情報共有の在り方が問われている(京都市上京区・府家庭支援課)

 福知山市で1歳7カ月だった三女を窒息死させたとして母親(28)が6月、傷害致死罪で起訴された。福知山児童相談所(児相)は、亡くなる2日前に女児の両頰にあざを確認したが、京都府警には伝えていなかった。京都府は事件後の会見で「虐待を思わせるあざはなかった」と繰り返したが、事件性をうたがった病院や関係者はいた。事件の予兆だったかもしれない「情報」は関係機関で適切に共有されていたのか。連携に問題がなかった、とは思えない。

 起訴状では、母親は2013年5月16日、三女が泣きやまないことに腹を立て、口にウエットティッシュを詰めて全身を毛布で包み、ほどけないようゴムで縛るなどして窒息死させたとされる。弁護人によると、母親は否認しているという。

 児相が母子と関わり始めたのは事件の約1年前。生後9カ月だった三女は「(自宅の)赤ちゃん用のいすから落ちた」として病院に搬送された。診断は急性硬膜下血腫。医療関係者によると、揺さぶられ症候群の可能性もあったという。児相には、転院先の病院(兵庫県)から「けがの原因は不明で、虐待かわからないが支援が必要な家庭」との連絡があったという。

 三女の退院後、福知山市や児相、保健所などが定期的に母子宅を訪問するようになった。13年5月14日に保健師が、マスクの下に隠れていた三女の両頰のあざを発見した。児相職員も急きょ、駆けつけたが「ベッドの中で元気に過ごす姿を確認した」とし、虐待はないと判断したという。2日後、三女は搬送先の病院で死亡が確認された。

 児相によると、過去にも三女の額などにあざがあったが「自分で床に打ち付けた」との母親の言葉を信じていた。一方、不審に思った複数の関係者は、母親の説明に曖昧な点が多いことなどを府に報告していたが反応はなかったといい、「強く保護を訴えていればよかった」と悔やむ。

 虐待をめぐる各機関の協力関係の在り方を研究する龍谷大の山田容准教授(社会福祉)によると、意思表示がうまくできない幼い子がいる家庭では、支援機関は親との関係維持に重点を置く傾向があるという。

 堺市で4歳の男児が行方不明になっている事件では、児相が両親の説明をうのみにし、2年以上も男児の所在確認を怠っていたことが発覚した。山田准教授は「児相が子どもの保護を優先し、市が親との関係を築く役になるなど役割分担が必要。当事者のニーズに寄り添った包括的な支援が大切だ」と訴える。

 京都府は7月、三女が亡くなった事件を検証する第三者委員会を立ち上げた。多くの機関が関わっていたにもかかわらず、なぜ幼い命を救えなかったのか。原点に立ち戻り、原因を究明してほしい。

[京都新聞 2016年11月16日掲載]

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