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民法の成人年齢18歳に 若年層の消費者被害懸念

報道部 清原稔也
(左)成人年齢を20歳と定める民法の第4条、(右)全国消費生活センター相談件数
(左)成人年齢を20歳と定める民法の第4条)
(右)全国消費生活センター相談件数

 成人年齢を20歳から18歳に引き下げる民法改正案が、来年の通常国会に提出される見通しとなっている。若者の社会参加の活発化に期待が高まる一方で、若年層の消費者被害の拡大などが懸念されている。民法が制定された明治期から続く「大人」の定義の大改変には、さまざまな課題が横たわる。

 成人年齢の引き下げで、まず大きく変わるのが「契約」の自由だ。18、19歳でも親の同意なしにローンも組めるようになる。現行法では、未成年者が商品の購入や金銭貸借などで不当な契約を結んでしまっても、親などが条件なく取り消すことができる。しかし、成人年齢を引き下げた場合に、この「未成年者取消権」が適用されなくなるため、悪質業者の新たなターゲットになる恐れがある。

 若者の社会経験の乏しさや判断力不足に付け入ろうとする悪質商法の被害は、実際に頻発している。国民生活センターによると、全国の消費生活センターに寄せられた相談件数(2011〜15年度)は、18、19歳の年平均が約1万1千件だったのに対し、未成年者取消権のない20、21歳はこの1・6倍に上った。特にマルチ取引の20〜22歳の平均相談件数(14年度)は、18、19歳平均の12倍に及び、成人年齢を引き下げた場合の被害の低年齢化が懸念される。

 マルチ商法は、大学のサークルや中学高校の同級生ら狭い人間関係の中で勧誘し合い、先輩からの依頼に断れない場面も出てくる。女性のエステに絡む高額契約や、異性に好意を抱かせて宝石などを買わせるデート商法の被害も後を絶たない。

 こうした被害を抑えるためには、学校での「消費者教育」の充実が求められる。従来も公民や家庭科の授業で契約解除の仕組みなどを教えているが、被害の実態から見ても十分とは言えない。また、専用相談窓口を各地に設け、取引する事業者に重い説明義務を課すことも必要だろう。若年層への勧誘を制限することや、成人になってからも契約取消権が適用されるよう、消費者契約法の改正も合わせて行うべきとの指摘もあり、慎重な議論が求められる。

 成人年齢に関係する規定のある法律は、少年法をはじめ全部で約200あるとされ、今後、見直しの議論が本格化しそうだ。例えば、未成年者に不利な労働契約は解除できるとする労働基準法の保護がなくなると、「ブラックバイト」の問題がより深刻化する恐れもある。親権も18歳に引き下げられ、親が離婚後に支払う養育費を早期に打ち切れば経済的に困窮し、進学を断念する若者も増えかねない。

 成人年齢の引き下げによって、若い人材が育つ機会が増え、社会が活性化するとの期待がかかる。ゆえに今後、国民を巻き込んだ丁寧な議論と、若年者保護の視点に立った施策の充実を求めたい。

[京都新聞 2016年12月28日掲載]

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