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災害時の「要配慮者」避難 障害に見合う支援を

文化部 上田裕子
災害に備えて少しずつ買い足した飲料水のストックを示し、「これでは何日ももたない。もっと集めておかなくては」と話す齊藤さん(京都市中京区・「ワークステーションかれん工房」)
災害に備えて少しずつ買い足した飲料水のストックを示し、「これでは何日ももたない。もっと集めておかなくては」と話す齊藤さん(京都市中京区・「ワークステーションかれん工房」)

 大規模災害が起きるたびに焦点となるのが、高齢者や障害者など自ら避難することが困難な「要配慮者」を巡る問題だ。昨春の熊本地震で支援に携わった人たちによるシンポジウムが大阪で開かれ、強い対人不安を抱える精神障害者が指定避難所に行けず、自宅や車中にとどまっていた事例が報告された。

 報告したのは、熊本県西原村にある障害者就労継続支援事業所の施設長。この事業所では身体、知的、精神の障害者約20人が働いている。発生直後からフェイスブックなどで安否確認をしたが、所在を尋ねると、大半が「自宅」か「車」。指定避難所に駆け込んだ人も、翌日には「避難所にいられないので自宅に戻る」と返信してきたという。

 施設長によると、障害者の中でも、統合失調症やうつ病など精神疾患を抱える人は不安を感じやすく、それが災害時には増大する。症状が悪化し、自殺願望が高まったり他の避難者とトラブルを起こすケースもある。日頃接触のない地域住民が大勢集まる指定避難所は「脅威」であり、「滞在どころか行くことすらできない状態だった」。このため、事業所は急きょ、利用者とその家族を受け入れた。

 精神障害者を巡る京都市の避難のあり方は、どう考えられているのだろうか。

 市保健福祉総務課によると、精神障害者を含む「要配慮者」は地域にある指定避難所に避難した後、障害の種類や程度などをもとに、福祉避難所に移されることが検討される。福祉避難所は市内に272カ所あり、このうち精神障害を対象としているのは30カ所。ただ、指定避難所に行かなければ、福祉避難所に入ることはできない。

 約20人の精神障害者が登録する障害者就労継続支援事業所「ワークステーションかれん工房」(中京区)は、災害に備えて飲料水のストックを始めた。「ここの施設でも、人に対する不安から数人が指定避難所に行けなくなるとみている。駆け込んで来られた時に受け入れられるよう、水だけでも準備しておかなければならない」と管理者の齊藤夕子さん(42)は話す。

 要配慮者に含まれていながら、必要な支援を受けるための場所に出ていけない−。こうした現状を要配慮者支援に詳しい佛教大の後藤至功講師(地域福祉)は「精神障害は医療の枠組みでとらえられることが多く、全国的に避難支援という福祉の視点では具体的な取り組みが進められてこなかった」と分析。さらに「精神障害者の症状悪化を防ぐには、安心できる人と静かに過ごせる個別の空間が必要。避難計画には、障害の特性に見合った対応法が盛り込まれるべき」と強調した。

 要配慮者といっても、求められる配慮は障害の状態によって違う。個々の状況に即したより細やかな支援のあり方を考えてほしいと思う。

[京都新聞 2017年4月19日掲載]

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