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民泊新法成立 トラブル防止へ規制強化を

報道部 沢田亮英
スーツケースを引いて歩く観光客。この後、民泊施設へと向かっていった(4月、京都市内)
スーツケースを引いて歩く観光客。この後、民泊施設へと向かっていった(4月、京都市内)

 6月に「民泊新法(住宅宿泊事業法)」が国会で成立し、京都市が新条例による規制策を検討している。新法は違法民泊がはびこる現状を是正する狙いだが、背景には国の規制緩和の流れがあり、京都特有の事情で規制を強化するのは難しい課題だ。

 「静かに暮らしてきた人生に、ひびを入れられたような感じ」。市内の長屋に暮らす女性は、隣家の民泊から響いてくる騒音に疲れ切った表情をみせた。「市に相談しても、管理組合で対応してと言われる」。分譲マンションの管理組合役員は、無許可民泊が疑われても対策が取れない現状をあきらめ顔で嘆いた。

 民泊新法を読めば、こうした問題が解決するように見える。届け出制で業者が把握でき、衛生面や騒音などの対策が義務付けられる。家主が不在の施設は管理業者を置く必要があり、仲介業者も登録制となる。営業日数は180日以内で、自治体が「生活環境の悪化防止」のため条例で制限、短縮できるとされた。

 ただ、衆参両院の法案審議では違法民泊対策や「180日」の解釈などに質疑が集中し、自治体が条例でどこまで規制できるかについて議論は深まらなかった。

 京都市は現状でも旅館業の許可を得ていない違法民泊の調査と指導、毎月70件前後の新規許可の処理に追われている。通報・相談窓口には2016年度、ほぼ毎月100件超の苦情があり、近隣トラブルへの対応も後追いになりがちだ。旅館業法と市の要綱による規制策でさえ徹底が難しく、市民の不信感を生む要因となっている。民泊問題に取り組む京滋マンション管理対策協議会の谷垣千秋代表幹事も「カジノを認めてとにかく観光客を増やそうとする国の政策そのものが不安」とし、規制緩和への反発もある。

 門川大作市長は「家主不在型と集合住宅は認めない方針でいきたい」と厳しい姿勢を示すが、「営業権や財産権という問題もあり、難しい」(市幹部)との悩みも聞こえる。早ければ来年早々にも新法が施行されるが、国の政省令やガイドラインが示されず、制度設計が進まない。市の担当者は「あたかも新法による民泊が解禁されたかのような印象だが、実務的には『あんこの中身』が全く見えない状況」と困惑している。

 無許可、無届けの民泊が解消されなければ、市が導入する宿泊税制度にも影響する。市民の負担感を和らげ、観光振興にもつなげる財源とするはずだが、徴収できない民泊施設が存在すると、宿泊客の負担が不公平になり、観光都市としての信頼が損なわれかねない。

 「市民が健全に暮らせない街で、観光客を健全に受け入れられるのか」。民泊の隣に暮らす、ある女性が発した問いかけは重い。火災や犯罪、感染症の発生など、民泊で深刻なトラブルが起きてから規制を強化するような事態は、あってはならない。

[京都新聞 2017年7月5日掲載]

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