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京都市バス1日乗車券の値上げ 他に混雑回避の策はないのか

報道部 竹下大輔
大きな荷物を持って京都市バスに乗り込む観光客。市バス車内の混雑に市民の不満がたまっている(京都市下京区・京都駅バスターミナル)=今年6月撮影
大きな荷物を持って京都市バスに乗り込む観光客。市バス車内の混雑に市民の不満がたまっている(京都市下京区・京都駅バスターミナル)=今年6月撮影

 車内は大きなバッグを手にした観光客であふれ、病院に向かうおじいちゃん、おばあちゃんが席に座れない。

 京都市バスを利用する市民はここ数年、こんな光景を見慣れているのではないか。

 訪日外国人の増加で活況を呈する京都観光の影で、バスの混雑が問題になっている。そこで市交通局は観光客に人気の高い「市バス1日乗車券」(500円)を値上げし、「市バス・地下鉄1日乗車券」(1200円)を値下げする計画を進めている。

 市バス1日乗車券は、3回乗れば元が取れる格安チケットだ。2015年度には614万枚を売り上げる一方、市バス・地下鉄1日乗車券は49万枚。価格差を縮めれば、観光客が市バスから地下鉄に乗り換える、という目算だ。

 市民の不満解消に動き出した姿勢は理解できる。しかし、人気乗車券の値上げという方法しかないのか。

 市バス1日乗車券は00年度、700円から値下げして以後、爆発的に販売数が伸びた。当時、タクシー会社「エムケイ」(南区)がバス事業に参入しようとした際、同局の経営努力の不十分さが批判され、苦肉の策として値下げした経緯がある。このため、経営改善を目指す市職員の間では、長年、「安すぎる」という不満が渦巻いていた。

 同局はこの問題を審議する有識者会議で、市バス1日乗車券を100〜200円値上げし、市バス・地下鉄1日乗車券を200〜300円値下げする4案を提示した。どの案も5億7千万円〜8億5千万円の増収となる見込みだが、増収分は「利便性向上に充てる」としながら、具体案は明らかにしていない。

 同局が有識者会議を設置したのは6月。8月中には新運賃を決め、来春に実施するという。しかし、市バス1日乗車券の購入者のうち、市民が35%を占める。増収分の使途もセットで議論し、バスの混雑回避を口実にした値上げだと疑われないよう、他の改善策を含めて慎重に決めるべきではないか。

 バス混雑の原因の一つに、観光客の大型荷物の持ち込みがある。JR東日本は東京駅など6駅でコインロッカーの空き状況をインターネットで発信し、JR西日本も昨年末から大阪駅で始めた。市は京都駅での導入を働きかけたり、私鉄を含めた鉄道による観光地へのアクセスを広報するなど、情報発信も改善の余地があるはずだ。

 6月末、京都駅で大きな荷物を持った外国人が順番を守らずにバスへ乗ろうとし、乗客が「なんや、あんたら」と声を荒らげる場面に遭遇した。このままでは観光客を温かく迎える「おもてなしの心」も薄れかねない。対策が急務ではあるが、市民に「単なる値上げ」と思われるような運賃改定をすれば、不満はさらにたまってしまうだろう。

[京都新聞 2017年7月19日掲載]

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