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宮津市歴史資料館休館10年 再開へビジョン示すべき

宮津支局 三皷慎太郎
オープンから5年足らずで休館した宮津市歴史資料館。中はまだ真新しいが、宮津の歴史を伝える貴重な資料は目に触れられず眠っている(同市鶴賀)
オープンから5年足らずで休館した宮津市歴史資料館。中はまだ真新しいが、宮津の歴史を伝える貴重な資料は目に触れられず眠っている(同市鶴賀)

 豊かな歴史と文化に育まれた町でありながら、あまりにふがいない。日本三景・天橋立を有し、古来多くの文人墨客が訪れた宮津市。経費削減を理由に市歴史資料館が休館になり、今年でもう10年になる。貴重な歴史資料は目に触れられることなく眠ったままだ。再開の見通しは立たない。これ以上問題を先送りせず、市はビジョンを早急に示すべきだ。

 資料館は、みやづ歴史の館(同市鶴賀)4階に2002年5月にオープンした。江戸時代の宮津の城下町や北前船を再現した模型など、古代から近代までの変遷をたどれる約300点の資料が並ぶ。

 来場者数は、国宝「天橋立図」を展示した03年度の6683人が最高で、それ以降は3500人前後と低空飛行。入館料収入は100万円にも届かなかった。05年度には市の単年度収支が初めて赤字に転落。施設管理の見直しで、07年3月、開館からわずか5年足らずで休館した。

 「市民は宮津の歴史に自信と誇りを持っている。休館は申し訳なかった」。06年の就任直後から財政健全化に取り組んだ井上正嗣市長は振り返る。厳しい財政状況の中、費用対効果の低い資料館の休館はやむを得ない部分もあった。

 しかし、10年前と比べ状況は変わった。「身を切る改革」(井上市長)でピーク時に200億円近かった市債残高は17年3月末までに70億円分減らし、危機的状況は脱した。京都縦貫自動車道の全線開通や「道の駅」の開設といったインフラも整備され、資料館周辺の浜町エリアににぎわいが生まれつつある。街並みの整備が進み、13、14年にかけて、府中地区と文珠地区が「宮津天橋立の文化的景観」として重要文化的景観に選定された。「北前船の寄港地」の日本遺産追加認定に向けた動きも加速する。井上市長も「市民からの声も多く聞かれるようになり、資料館再開に向けた段取りを進めていかないといけない」と前向きに捉える。

 周辺環境は整ってきたが、資料館そのものに求心力が備わらないままでは10年前と変わらない。

 市には国、府の指定文化財が計55件あり、府北部で1位、府内でも5位だ。一方、専門学芸員は2人しかおらず、多忙を極めている。ソフト面のサービス充実のためにも、人材確保は喫緊の課題。スタンスが定まらないと現場も動けない。河森一浩学芸員は「再開が決まらないと、逆算して戦略を立てることができない」と話す。

 「資料館は人が集い、まちづくりの拠点としての機能を果たさないといけない」と河森さん。市民グループとの連携が欠かせず、どんな資料館にするのか市民も交えた議論の場も必要だろう。指針を示し、具体的に行動すべき時期に差し掛かっている。

[京都新聞 2017年7月26日掲載]

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