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芸術家集う丹後 魅力発掘、地域力の向上に

京丹後支局 大西保彦
「音のある芸術祭」でアーティストから作品のコンセプトや表現手法などを聞く来場者(10日、京丹後市網野町・旧郷小)
「音のある芸術祭」でアーティストから作品のコンセプトや表現手法などを聞く来場者(10日、京丹後市網野町・旧郷小)

 アーティストの視点から地域の魅力を発掘する試みが全国で活発になっている。京丹後市でも9月、二つの現代芸術・美術のイベントがほぼ同時期に企画された。豊かな自然や歴史でアーティストを引きつける強みを生かし、丹後の地域力向上を進めたい。

 美術家の池田修造さん(64)=網野町=ら市内外のアーティストでつくる「丹後アート会議」は9〜18日、峰山町で展覧会「日本海×アート×漂流 大地は器」を開いた。海岸に漂着した迷惑な海のごみを、逆転の発想で創作品の素材に活用。来場者が漂流物から丹後と中国大陸、朝鮮半島とのつながりに思いをはせるように仕掛けた。

 サウンドアートの先駆的存在の鈴木昭男さん(76)=網野町=や香港のアーティストらは9〜24日に「アートキャンプ丹後 音のある芸術祭」を催している。芸術関係者が地域に滞在して創作する「アーティスト・イン・レジテンス」を8月下旬から実施。丹後の風土からインスピレーションを得た作品を閉校した小学校舎で披露している。

 丹後の魅力は何だろう。音のある芸術祭に参加したアーティスト、フィオナ・リーさん(29)は「丹後は静かで聴くことに集中できる。鳥や虫の声などが創作に影響している」、東京を拠点とする大城真さん(39)も「浦島伝説や古墳など考える要素が多い」と話す。丹後アート会議代表の池田さんは「丹後は中国大陸や朝鮮半島を観望しながら地球の課題を考えることができる地域」と強調する。

 日本海形成の地形や地質を観察できるジオパークがあり、古代に交易で栄え「丹後王国」と呼ばれた歴史を持つ丹後。日本の原風景といえる農山漁村の人々の営みも残る。古くからの製織や製鉄の技術は現在の織物業、機械金属業につながっている。

 そんな魅力を生かしてアートの取り組みを進めていくには「地域の人をいかに引き込んでいくかが大切」と同会議に参画する中前寛文さん(62)=大阪市=は話す。舞台芸術の制作地として国内外で評価の高い城崎国際アートセンター(兵庫県豊岡市)の田口幹也館長(48)も「アートがなぜ必要なのかを丁寧に伝えることが重要」とする。同センターは、滞在中のアーティストによるワークショップなどで市民が芸術に親しむ機会を設けている。

 少子高齢化や織物業の低迷などで丹後は活気を失いつつある。だが、3年後の丹後ちりめん創業300年をはじめ今年の日本遺産認定や「安野光雅館」開館など、地域活性化の契機となる好材料もある。アートもその一つとなるはずだ。鈴木さんは「今回の催しのようなことを行えば外の人に目を向けてもらえる。子どもから高齢者までが豊かに楽しめるまちになれば」と話す。

[京都新聞 2017年9月20日掲載]

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