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重症心身障害児の在宅ケア 発達、休息の機会保障を

洛西総局 本田貴信
眠り込んだ慶生君をなでる母親の真衣さん。「元気にしている子がいるって伝えたい。一日一日を大事に過ごして行けたら」と願いを口にした(乙訓地域の自宅で)
眠り込んだ慶生君をなでる母親の真衣さん。「元気にしている子がいるって伝えたい。一日一日を大事に過ごして行けたら」と願いを口にした(乙訓地域の自宅で)

 在宅生活を送る乙訓地域の重症心身障害児を取材している。重度の身体障害と知的障害の重複に加え、高度な医療的ケアが必要になると自宅外で過ごせる場は限られる。発達の機会や家族の休息をどう保障するのか。課題は多い。

 4カ月ぶりに再会した杉井慶生ちゃん(2)は手から手へおもちゃをつかみ換えられるようになっていた。「できることが増えたね」。両親が笑うそば、人工呼吸器を付けた慶生ちゃんが息を漏らす。産前に両親は生後1年の生存率が10%と告げられていた。

 心室中隔欠損症など慶生ちゃんの疾患は染色体の異常が原因だった。両親は延命治療を断ろうと思った。でも、3千グラム超で生まれた姿に希望がわき、考えを変えた。生後8カ月で新生児集中治療室を退院。医師や保健師が連携し、在宅生活を支える体制を整えた。

 母親の真衣さん(31)は、3月に第2子を出産した。妊娠した際、出生前診断を受けた。エコー検査で問題は見られなかったが、確実な結果がほしかった。「慶生と同じ病気だったら生活していくのは無理かな…」。何度も夫と話した。真衣さんは「責任を持って慶生を育てる上でも必要なことだった」と振り返る。

 慶生ちゃんは今、重症心身障害児に特化して通所サービスを提供する乙訓唯一の事業所「からふる・ぶらんしゅ」(向日市)を利用している。2月開所の施設で、酸素吸入の管理など介護職では担えない範囲の医療的ケアにも看護師が対応し、理学療法士らが心身の発達を促す。

 「からふるがなければ慶生はここまで動けるようにはならなかったと思う」と真衣さん。頻繁なたん吸引が必要で遠方への通所は困難だった。からふるは自宅から約10分。ようやく巡り合えた場所だ。

 9月中旬、脳性まひで常時介助がいる支援学校中学部1年の男児(13)=同市=を訪ねた。からふるの利用者だ。母親(49)の表情が曇っていた。男児の発熱が10日間続き、自宅でつきっきりの母親は「よく考えられない。言葉が出てこない」と漏らした。

 後日、母親は男児の歩みを話してくれた。医療的ケアが障壁で学童保育は利用できなかった。母親はヘルパー派遣を受けて仕事を続けたが自身の病気も重なり、男児が小学3年になって退職。小学5年の秋に男児は容体が急変し、気管切開した。必要とする医療的ケアは高度化し、放課後等デイサービスの通所をやめた。家族の休息を兼ねて利用していたショートステイも受け入れ体制が整わず控えた。「安心して過ごせる場が、もっと地域に増えてほしい」

 母親が「待望の施設」と信頼するからふるは7月、職員の急な退職で存続が危ぶまれた。人員基準を満たすため非常勤の職員を確保し何とか乗り切った。「担い手不足にあえぐのは全国共通の問題」と神谷真弓代表(50)は言う。「か細い支えでも、責任は重い。行き場を失う子を出す訳にはいかない」

[京都新聞 2017年9月27日掲載]

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