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待機児童解消 保育士の待遇改善不可欠

京田辺・学研総局 大竹逸朗
京田辺市が認定こども園建設に向け、新興住宅地近くで取得した用地。保育士確保が急務だ (京田辺市同志社山手)
京田辺市が認定こども園建設に向け、新興住宅地近くで取得した用地。保育士確保が急務だ (京田辺市同志社山手)

 先月の衆院選で論点の一つになったのが、待機児童の問題だった。京田辺市でも今年4月に多くの待機児童が生じ、いまだ解消されていない。保育士が不足している現状がある。保育士の待遇改善が進んでいないことが問題の解決を妨げている。

 保育士の賃金は他の業種に比べて低く抑えられてきた。立場が不安定な非正規も多い。現場では「子どもの命を預かる仕事なのに軽視されている」と不満が募っている。

 今春まで府内の私立保育所に正職員で勤めた40代女性は「手取りで20万円未満だった」と打ち明ける。残業や土曜出勤に加え、責任がのしかかる。園では正職員1人とパート数人で10人以上の0歳児を見守る。「昼寝の時は5分おきに顔色を見て、一人一人チェックリストに書き込む。気が抜けない」。親からの要望も以前より厳しくなったという。

 国は待機児童対策の一環で、保育士の処遇改善に取り組んでいる。今年は国の財源で賃金に月約6千円を加算し、新たに中堅職員らの昇給制度(最大月4万円加算)も設けた。しかし、厚生労働省の調査によると、2016年の保育士の平均月給は約22万円で、全産業平均より約11万円安い。府内の独身男性保育士(35)は「家族を養っていけるのか悩む。結婚を機に保育所を辞めて工場や営業職に転職する友人もいた」と話す。

 自身の育児と仕事の両立に悩む保育士も多い。府南部の女性保育士(37)は7年前に一時離職して2人を出産し、現在はパート勤務だ。正職員になることも考えているが、「朝7時の早出だと、子どもより先に家を出なければいけない。子どもを保育園に送れない」。社会全体の働き方改革に物足りなさを感じた。

 京田辺市では今年、入所希望の急増に加え、保育士の半数を占める臨時職員が18人も退職し、4月時点で待機児童が府内自治体で最多の140人になった。人口増が見込まれる市南部に民設民営の認定こども園を建設する用地を取得するなど施設整備は進むが、保育士の確保は難航している。

 市が保育職場の現状把握に向けて臨時職員に面談したところ、待遇改善を求める声が多かったという。臨時職員は正職員と同じ業務をしても賃金は低い。市は勤務の年数に応じて賃金加算する制度を導入したが、額は少ない。これまでに臨時職員への応募はなく、10月1日時点で56人の乳幼児が入所待ちだ。

 待機児童は、今年4月当初で全国約2万6千人。国は2020年度に「待機児童ゼロ」を実現するとし、保育所などの「保育の受け皿」を、約50万人受け入れている現状から、さらに32万人増やす計画だ。幼児教育・保育の無償化も掲げるが、保育士がいないと目標は実現しない。保育士が子どもの可能性や個性を伸ばす重要な職種であることを認識し、労働に見合った待遇を整えるべきだ。労働環境を改善し、周囲のサポート体制も、もっと手厚くしてほしい。

[京都新聞 2017年11月1日掲載]

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