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占領期の京都で米軍事故や事件多発 史料調査で判明

占領軍が起こした交通事故を西川さんが緑の点で書き込んだ。東大路通や烏丸通で事故が多い=「古都の占領」より
占領軍が起こした交通事故を西川さんが緑の点で書き込んだ。東大路通や烏丸通で事故が多い=「古都の占領」より

 「戦争の本質は占領期も合わせて考えるべきです」。1945(昭和20)年夏、日本はポツダム宣言を受諾。その後7年間にわたり米国を中心とした連合国軍の占領下に置かれた。京都文教大元教授の西川祐子さん(79)は、生活史の視点から京都の占領期研究を続け、集大成の新著「古都の占領」を出した。占領期にもあらゆる形で「暴力」が通底した実態を見逃してはならないという。

■米兵の動線でひき逃げ

 和歌山港から上陸した占領軍は45年9月25日、京都に入った。東寺(南区)近くの当時7歳だった女性は「外出禁止となり軍隊が長い行列で国道1号を行進してきたのを二階の窓から息を殺すように眺めていた」と回顧する。伏見区の女性は草色のジープの列が地響きを立てて通る中、車内の米兵の顔がピンク色に見えた。ひもじい自分たちと比べて栄養がゆきわたっている姿に驚いたという-。

 占領期の京都で何が起きていたか。西川さんはこの十数年、約80人に聞き取りを重ねた。一方、京都府立総合資料館(左京区、現京都学・歴彩館)に眠る府文書「進駐軍事故見舞金支出負担行為書」などを調べ、占領軍が公にしなかった事故や事件を掘り起こした。

 地図には占領軍が起こした交通事故を緑の点で書き込んだ。八坂神社周辺の東大路通や烏丸通で事故が多い。当時、占領軍の将校向け住宅が府立植物園(左京区)にあった。そこから占領軍司令部があった四条烏丸の大建ビル(現COCON烏丸)や京都駅を結ぶと「動線1」が浮かぶ。また、独身兵舎があった岡崎の現みやこめっせ(左京区)と、同じく兵舎があった深草(伏見区)を結ぶと「動線2」となる。二つの線を中心に占領軍の車が激しく往来した。

■集団暴行で死亡例「氷山の一角」

 先の府文書には被害者側の生の声が多く含まれる。祇園一帯では米兵の飲酒事故を訴える証言が多い。幼児が親兄弟の後を追って道に出た途端ひかれた事故もあった。大抵はひき逃げ。犯人の特定は難しかった。西川さんは「無線連絡を受けた白いジープのMP(米軍憲兵)が府警より早く事故現場を片付け、公にならない仕組みができていた。でも、口コミで広がり、祇園の石段にジープが駆け上がったという話が今も語られる」。

府文書によると暴行や傷害事件も頻発した。伏見区深草では45年12月、23歳の男性会社員が帰宅中に多数の刺し傷を受け、3日後死亡した。男性は死の床で「進駐軍」「2人」「つけやがった」と口にしたという。また、現場の畑に極めて大きな靴跡が散乱していたのを男性の兄が目撃。診察医も「見たことのない傷で、外国人の仕業と想像できる」と記す。しかし犯人が捕まることはなかった。相楽郡でも米兵による集団暴行で住民が死亡したという。

 占領期は被害者側が占領軍や将兵に賠償を求めることはできなかった。日本政府は終戦処理費から見舞金を支給したが、被害者側が警察の証明などをそろえ申請する必要があった。在日コリアンらは門前払い。壁は高かった。府庁文書に残る被害数(428件)は「氷山の一角にすぎない」(西川さん)。

 数百人規模の集団申請もあった。45年秋には日本軍の武装解除のために爆弾を爆破処理中、舞鶴で作業員33人が死亡したり、周囲の民家が破損したりする被害が相次いだ。朝鮮戦争直前には、米軍の演習のため茶園や畑が踏み荒らされたとして城陽の農家団体が訴え出ている。

 日常の暮らしの中でも占領軍は諜報(ちょうほう)網を張り巡らせた。朝鮮戦争反対のチラシを電柱に張っただけで後日、英文の逮捕状を持った警官が来たという証言もある。「米兵がガムを配るなどソフトに装っても、占領の本質には暴力や不当な抑圧がある」(西川さん)。52年のサンフランシスコ講和条約発効までは、あくまで休戦期。武力による占領は続いた。

【 2017年10月12日 17時00分 】

ニュース写真

  • 占領軍が起こした交通事故を西川さんが緑の点で書き込んだ。東大路通や烏丸通で事故が多い=「古都の占領」より
  • 新著「古都の占領」は500ページに及ぶ大作
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