出版案内
福祉事業団

甲賀忍者、幻から実在へ 滋賀、古文書発見で“光”

渡辺家古文書の主な内容
渡辺家古文書の主な内容

 「少なくとも江戸時代には確実に存在した」-。史料がないとして存在を疑問視されることも多かった「甲賀忍者」に対し、甲賀市の見解が変化している。市内の民家から見つかった古文書を読み進めた結果という。大学での研究も進み、「陰の存在」である忍者に日が当たりつつあるようだ。

■リアルタイムの記録、尾張藩に仕える

 「後世の記述でないリアルタイムの忍者史料が市内で初めて見つかった」。市教育委員会歴史文化財課がそう指摘するのは、2000年に同市甲南町杉谷の渡辺俊経さん(79)の自宅で発見された古文書だ。定年退職で故郷に帰った渡辺さんが蔵の中を探して見つけた。

 そのうちの何点かは「忍という文字があり、内容が単なる家の記録とは違うと分かった」と渡辺さんは話す。「ただ崩し字も読めず価値が分からなかった」と当時を振り返る。一部の知人らのほかは人目に触れることはなかったが、忍者観光を推し進める市観光企画推進室から16年春、「貴重な市民の財産」と冊子にまとめることを求められ、古文書を提出した。

 古文書から、渡辺さんの先祖は杉谷の地で農業をする傍ら、尾張藩に忍びとして仕えた「甲賀五人組」の一人と分かった。「御忍役人起請文」という、尾張藩に提出した機密保持の誓約書の写しもある。「文書の多くは、初代が1690年ごろに書いたもの」と渡辺さん。家屋への侵入法やたいまつのたき方、爆薬の配合など忍びの技術のほか、弓術や居合術、馬の飼い方、算術などの説明もあるという。

 市による解読作業はほぼ完了。市は、関連する約70点の文書を活字化し、注釈、解説を添えた冊子を5月にも刊行する。

 甲賀忍者について、市教委歴史文化財課は「戦後、外からイメージされたもの」として、2004年から始まった市史の編集では抑制的に扱った。中世に自治組織をつくって地域を治めた甲賀武士の子孫らが、江戸時代に自らの出自・来歴をまとめた「由緒書」の中で、かつて忍術を使い軍功を挙げたと主張している、と記すなどにとどめた。

 しかし、渡辺家古文書は「自分たちが納得できるストーリーを記した由緒書とは違う。江戸時代に忍術を仕事として藩に仕えていたことを示す史料」と説明。解読に関わった滋賀県教委文化財保護課も「郷土史における甲賀忍者の扱いは、ここ10~20年はっきりしなかったが、渡辺家古文書で変わるだろう」とする。

■大学で研究対象に、シンポも盛況

 大学でも忍者を研究対象として扱うようになった。三重大は12年から伊賀市などと連携して忍者研究をスタート。山田雄司・同大学人文学部教授(日本古代・中世史)は、各地の文献に記された歩き方や呼吸法の検証、薬草や食物、毒の作り方などの再現も行い「現代科学で見ても理にかなっている」とする。忍者研究は「ここ3、4年で見方が変わった」とし、現在は正当な学術的研究と見なされていると話す。

 甲賀市は2月、磯田道史・国際日本文化研究センター准教授(日本近世・近代史)を招き、忍者をテーマに渡辺さんや岩永裕貴市長らとの討論会を実施。約850人が詰めかける人気だった。市は今後、磯田さんと協力して、他に埋もれた古文書がないか発掘調査などを進めるとする。

 一方で、黒装束をまとい超能力を発揮する「忍者」は、漫画やアニメなどで世界的に知られるようになった。市観光企画推進室は「甲賀市の場所は分からなくても甲賀忍者を知っている人は多い。東京五輪も控え外国人向けアピールにもなる」と、忍者PRに力を入れていく考えだ。

【 2017年04月03日 17時00分 】

ニュース写真

  • 渡辺家古文書の主な内容
  • 自宅の蔵で見つかった古文書を読む渡辺さん(甲賀市甲南町杉谷)
京都新聞デジタル版のご案内

    観光・社寺のニュース

      政治・社会

      山口組総本部を家宅捜索、警視庁
      直系組長のヤミ金融事件

      20180120000062

       ヤミ金融を営んでいたとして指定暴力団山口組の2次団体「章友会」会長松岡錠司容疑者(50..... [ 記事へ ]

      スポーツ

      全国男子駅伝21日号砲 京都、2年連続入賞狙う

      20180120000068

       天皇杯第23回全国都道府県対抗男子駅伝が21日、広島市平和記念公園前を発着する7区間4..... [ 記事へ ]

      経済

      フェイスブック、配信元で表示差
      信頼できる記事優先

      20180120000029

       【ニューヨーク共同】米交流サイト大手フェイスブックは19日、信頼できる報道機関によるニ..... [ 記事へ ]

      教育・大学

      分校生徒大忙し、米こうじ作りピーク 京都・綾部

      20180120000039

       京都府立綾部高校の生徒による同高名物の米こうじ作りが、綾部市川糸町の同高東分校でピーク..... [ 記事へ ]

      環境・科学

      快適追求の陰に危うさ <連載「いのちとの伴走」を終えて>

      20180118000179

       科学技術の成果は現代社会の隅々まで張り巡らされ、生の形を変えてきた。だが、快適な生活が..... [ 記事へ ]

      国際

      キルギス伝統帽子の着用は義務?
      議会に法案、賛否両論

      20180120000072

       【モスクワ共同】中央アジアのキルギスで、大統領や首相、スポーツ選手らに外国訪問時や公的..... [ 記事へ ]